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FINAL FANTASY 8

スコール受。サイスコでも自分的FF8ベストCPはスコリノなので、リノアは大事にされてます。
当時はもっと色々ラグスコとかアースコも書いてたんですが、今見ると羞恥に耐え切れない…(汗)


Dawn Valley [19990430-20001015]
 サイスコ。死にネタ。サイスコの話だけどヤツらの出番は殆どありません。

愛ではない、何か。 [19991231]
 サイスコ。ポエムチックなサイファー独白

original sin [20000812]
 サイスコ。同人誌「楽園追放」より再録。

Beautiful Name [20000823]
 ノーマル。スコールのモノローグ。母からの最初で最後の贈り物。

I wish you a happy new year. [20010101]
 ノーマル。スコールのモノローグ。大切な人たちへ。



I wish you a happy new year.




 「雪だ…。」

 海に落ちる雪。

真っ暗闇の中、闇色の水が打ち寄せる音と、真っ白な雪が音もなく舞い落ちる姿。

 そして。

新しい年を告げる鐘の音。

 いろいろなことがあった、と思う。

1年前と今とでは、自分を取り巻く状況は随分変わった。

自分も変わった。

 この新しい年が、どうか誰にとっても幸せな年となるように。

そう、祈れるようになった自分がいる。

1年前は何も祈らなかった。何を祈ればいいのかわからなかった。

この1年で、愛されていることを知った。

「スコール!パーティー、始めちゃうよーっ!?」

自分のいるバルコニーに向かって、大きく手を振って呼び掛ける声。

その周囲には、仲間たちの姿。

「…今行く。」

無愛想な返答は変わらない。変われない。自分でももどかしいけれど。

 それでも。

この1年で、自分は愛されていると知ったから。

これからの1年で、自分も、彼らを愛しているのだと、伝えられるよう、努力してみようと思う。

 まずは、パーティが始まったらこう言おう。

大切な彼らの新しい年が、幸せであるように。

「I wish you a happy new year.」


Beautiful Name




 アナタからオレへ。
最初で最後のプレゼント。
 独りっきりで、寂しかったでしょう?
「頑張れ」と励ましながら手を握ってくれる相手もいなくて。
 自分の命の影が、頼りなげに揺れる中で、きっとアナタはそれでも気丈に強くあろうとしたんだろう。
困っている者を見過ごすことの出来ないバカな男を好きになった、自分に呆れながら。
 アナタは苦しい息の中、懸命に微笑もうとしただろう。
アナタだけに見えただろう、2度と触れることの叶わない、愛しい男の笑顔に応えて。
 オレがこの世で最初に感じたのは、無条件にオレという存在を喜んだアナタの涙。
記憶なんてなくても、オレにはわかる。アナタの頬を伝った歓喜の涙が。
 アナタは、自分の時間が急速に失われていくことを覚っていただろう。
だから。
 アナタはきっとまだ何もわからないオレに謝っただろう。
その腕にきちんと抱くこともできないことを。
オレと一緒に、愛しい男の帰りを待つこともできないことを。
朦朧とする意識の中、「愛してる」と「ゴメンね」を繰り返しオレに囁いたのだろう。
 でも、大丈夫。
アナタは、ちゃんとオレにプレゼントをくれた。
それは、僅かな時間しか一緒にいることのできなかった、アナタと、オレを繋ぐ橋。
 大丈夫。そしてありがとう。
アナタがオレにくれた唯一のプレゼントを、オレは愛しく思ってる。
オレの大切な人たちから、愛しく想う相手から、優しい響きで発せられるそれを。
 アナタからオレへ。
最初で最後のプレゼント。

「スコール。」


original sin




ずっと、不思議だった。

 食べてはいけないとて言われた実を食べて、昔、人は楽園を追われた。

食べた実は、「知識の木」の実。

それを食べて人は、自分たちが裸であることを知り、それを「恥ずかしい」と思うことを知った。

「恥ずかしい」と感じることは、つまりその「恥」の部分に欲を覚えたということ。

 それの、どこがいけないんだろう。

 「何考えてる?」

唇を、首筋に押し当てたまま尋ねるその動きに、たまらなく感じる。

サイファーの腕は、いつも熱くて気持ちいいとスコールはぼんやりと考えた。

「・・・別に。」

素っ気なく言えば、サイファーはおかしそうに笑ってスコールの鎖骨に赤い跡をつける。

 一瞬身をすくませる、隠しようのない、快感。

「相変わらず、感じやすいな、おまえ。」

「・・・うるさい。」

 熱いサイファーの腕が、冷たいスコールの体の上をするりと這う。

 相手の体に欲を覚える。

腕、足、指、胸、首、顔、背中、唇、瞳。

 それに触れたくて、触れて欲しくて、頭がいっぱいになる。


 それは、罪なんだろうか?


 冷たいスコールの体が、少しずつ、少しずつ、熱くなる。

まるで、触れるサイファーの腕と同化するように。

「・・・ふっ・・・ぁ・・」

 サイファーの唇が、胸に赤く息づく突起をついばむと、堪らなくて声が洩れた。

 

 この快感を、神は悪だというのか。


「おまえ、スキだよな、こうされるの。」

するっと、触れるか触れないかのタッチで脇腹を撫であげると明らかにスコールの体が震える。

 快楽を導き出すことに慣れた手。

この手も、楽園を汚す武器なんだろうかとスコールは霞がかる頭で思った。

 神が作った楽園は、プラトニックラブだけを、強制する。 

 「ぅ・・ぁ・・っん」

熱いサイファーの手が、スコール自身を扱く。汗ではない体液に塗れた手がぬらぬらと光って淫らに映る。

「…もっと、啼けよ。」

「は・・ぁっ・・。くぅっ…んんっ」

 唇を噛み締めても、噛み締めても、絶えることのない喘ぎ。

自分を乱す男が「もっと啼け」と言うから、その啼き声を男だけに伝えたくて、深くくちづけた。

 絡めあう互いの舌に乗せて、素直に伝える。

「キモチ、イイ―――――――。」

 神よ。

 なにより愛しい者と、こうして触れ合うというこの快感を、どうしてアナタは否定するんだろう?

 「キモチイイ」と思うことが、そんなにいけないことなんだうか。

こんなにも、満たされるのに。

 体の中を掻き回す指に翻弄される。

もっと、と体中が泣き叫ぶ。

 そして、ひとつになる。

「…ぁぁあああっ…っ!」

 体の底から涌き上がる、歓喜の叫び。

体の隅々まで、満たされる。

細胞のひとつひとつが、自分を貫くこの男が愛しいと謳う。

 なにより純粋で、穢れも、嘘も、偽りもない、幸福。

神よ。

 アナタは、この幸福を否定するのか?

こんなに、キレイなものを?

 

アナタの楽園の掟は、人の本能を否定する。

このプリミティブな幸福を。


 始まりの男と女が犯した罪は、人に生まれながらの罪を持たせた。

けれど。

 深く抉られ、揺さぶられ、壊れるほどの快感に、自分とひとつになった目の前の愛しい男と離れるまいと、自分の体の内に息づくサイファーをきつく締めつけながら。

 スコールは、見たことのない神に向かって宣言する。

 始まりの男と女が犯し、それ故に人が生まれながらに持つという原罪が、相手を欲するこのプリミティブな衝動ならば。

 自分は、原罪を背負わせてくれた始まりの男と女に感謝する。

 そして。

本当に人を欲するこの想いを罪だと言って。

プラトニック・ラブなんてキレイゴトを強制する楽園なんて、願い下げだ。

 神よ。

アナタは可哀相な存在だ。

こんな純粋な幸福を、知らないなんて。

アナタはアナタの作った小さな園で、綺麗事ばかりの世界を護っていればいい。

 そんな楽園は俺たちには、要らない。


愛ではない、何か。




 吐息の熱さに、イキそうになる。
「…ぁっ」
 噛み締めた唇から洩れる喘ぎに、狂う。
おまえは、俺にたやすく翻弄されながら、その実、そのすべてで俺を翻弄する。
「サ、イ…ファ…っ・んっ」
 焦点の合わない、濡れた視線で俺の中のすべてを押し流し、俺の中をおまえだけで占領する。
 ミダラ。
初めておまえを抱いた時、おまえほど、この言葉の似合うヤツはいないと思った。
あんなに潔癖な、あんなに冷たい昼間のカオはどこかへ消え。
戸惑うほど艶やかな、恐ろしいほど美しいカオが姿を見せる。
 そんなおまえに翻弄されるとわかっていながら、俺はおまえから離れることができない。
時に熱く、時に冷たい、おまえ。
その熱さに灼かれ、その冷たさに射ぬかれ、俺はいつか身を滅ぼす。そんな予感がする。
「なに…かんが・・え、て・・っる・・?」
「…おまえのことさ。」
「ぁあ・・っ」
 殊更冷たい顔を作って、俺はおまえを刺し貫く。
おまえに、この感情を覚らせないために。
そして、心のどこかで警鐘を鳴らす、俺自身のために。
 スコール。
俺はおまえのために、いつか、この身を滅ぼす。
自分でわかっていながら、俺は俺を止めることができずに。
おまえから離れることができずに、滅んでいく。
 俺の意思ではコントロールできない、俺を破滅に追いやるこの感情を、俺はなんと呼べばいいのか知らない。
おまえによってもたらされた、おまえだけにしか感じない、この感情の名を俺は知らない。
 愛じゃない。愛なんかじゃ、ない。
そんなキレイな言葉で表せるようなモノじゃない。
おまえだけに感じるこの気持ちは、そんなキレイなモノじゃなく。
もっと、どす黒く、もっと、熱く、もっと、毒々しく、もっと、痛々しく、もっと、汚く、もっと、美しく、もっと、もっと、甘い。
 スコール。
おまえが、その冷たい眸で、熱い腕で、俺に授けたこの感情は、愛ではなく。
俺のすべてを支配する。

愛ではない、何か。


Dawn Valley 15. -the Witch.-




 バカなことするなって、言われそうだね。
そうだね、わたしもバカなことするって思うよ。
そう思うならやめろって、言うね、きっと。
 ゴメンね。やめられないの。
 何で止めなかったんだって、みんなのこと、責めないでね。
みんなには、話してないんだもん。
 ラグナさんは、知ってるけど。考えなおせって言われたけど。
でもね、思いつきじゃないんだよ。昔みたいに、「作戦変更!」ってしゃがみこんでその場で決めたわけじゃないんだよ。
 ずっとずっと。考えてたんだ。
これじゃ、繰り返しなんじゃないかなって。
 だって、魔女の力の継承を止めない限り、この歴史は何度も繰り返される。
わたしたちのこの世界のはるか先に、確かにアルティミシアは誕生して、力を使って、過去を浸食して。スコール、あなたに倒されて、そしてその力をイデアさんに継承して、それはわたしに継がれて。あなたは何度も何度も“伝説のSeeD”になり続けて、サイファーと一緒に何度も何度も苦しんで、何度も何度もあんな終わり方を迎えなきゃいけない。そんなの、わたしはイヤ。
 だから、終わりにするの。
わたしにしか出来ないから、わたしがする。それだけ。
 わたしが、わたしの時間と一緒に、繰り返しの歴史を持っていくよ。
そして、先へ続いていく未来を持ってくるから。
 大丈夫だよ、安心して?ね?
ちゃんと、人生で一番楽しい時期は過ごしたよ、わたし。
キスティやセルフィと一緒にお買い物行ってお茶飲んだり、お父さんと一緒に食事に行ったり。みんなでパーティしたり。
 他愛無いかもしれないけど、凄く楽しいこと、いっぱいした。
ほら、女は一生綺麗でいたい生き物だっていうでしょ?だから年取るのを怖がるって。
 わたしなんて、この一番いい時期を持続できちゃうんだから、ある意味すごいと思わない?
 ティンバーだって独立したんだよ?お父さん、新しいお嫁さん貰ったし。ふふ、すごく優しくて素敵な人なんだ。
 ホントに、大丈夫だから。
わたしは満足してる。
 ホントは心残りも1つだけあるけど、それは仕方のないことだし。
それはなにかって?そんなの決まってるじゃない。鈍いなあ、もう。
 あなたたちと、同じトコに逝けないってことに決まってるでしょ。
まあ?同じトコに逝っても、ふたりでラブラブだったら居心地悪くてしょーがないだろうからいいけどねーっ!
って、ヤだ、今ちょっと想像しちゃった。似合わなさ過ぎる…。
 ね?わたし、大丈夫でしょ?
でも納得なんてしてくれそうにないなあ…。ゴメン、ね。
 許してなんて、言わないから。
あなたたちが、決して望まなかった道を選ぶわたしを、許してなんて言えないから。
 ごめん、ね。それしか言えないけど。
 いつかまた、あの約束の場所で、逢えるといいね。
 いつか、また…ね…。



 世界の歴史が大きく変わったその日。
それを知ったのはごく僅かな人々だけだった。
世界中の人々がその事実を、繰り返しのない人類の未来という形で認識するのは、それから100年近く経ってからのこととなる。

 エスタ魔女記念館。
十数代前の大統領の指示で今も厳重に護られているその建物の奥に、1人の魔女が眠っている。
 鎖を通して首に下げた武骨な指輪を大事そうに握り締めたまま、まるで話し疲れて眠ってしまったかのように。
 少女のような面影を持った魔女は、ひっそりと、今もたった1人で眠りつづけている。


Dawn Valley 14. -50 years after-




 その日。
新聞の片隅に小さな記事が載った。
 人々の記憶の彼方に追いやられた、とある事件について。

『今から約50年前。センセーショナルな事件が起こった。
バラム・ガーデン殺人事件と呼ばれたその事件を記憶している読者も中にはいるだろう。
“伝説のSeeD”という言葉を記憶している読者なら多いはずだ。
 未来の魔女の脅威から世界を救った英雄。
それが“伝説のSeeD”である。
 事件は、その“伝説のSeeD”が、在籍していたバラム・ガーデンのクラスメートに殺害され、被害者の葬儀当日に加害者も自殺したというものである。
 被害者の名はスコール・レオンハート、加害者の名はサイファー・アルマシー。
多くの読者諸君は忘れてしまっていたであろう名だ。若い世代の読者には、忘れるどころか、元々知らないという者もいるだろうと思う。
実際、筆者自身も“伝説のSeeD”は知っていても、彼の名は知らない世代の人間だ。
 当時、この事件はあらゆるメディアで大きく取り上げられ、人々の関心を一手に集めた。
当然のことだろうと思う。日付を見れば、この事件が“未来の魔女大戦”から1年も経っていないうちに起こったことがわかる。
“伝説のSeeD”は現在よりももっと熱狂的に英雄として称えられていたであろうことは想像に難くない。
 では、何故、こんな事件が起こったのであろうか。
実は、これは最大の謎なのである。真相は全くの闇の中だ。当時もかなりの追及がなされ、様々な推測が飛び交ったようだが、関係者が一様に口を閉ざし、この事件を「魔女ハインの謎」と並ぶ最大のミステリにしてしまったのである。当時、どのような推測が飛び交ったのかはここでは割愛することとするが、興味を持った読者は自分で調べていただきたい。
 閑話休題。
 今回、筆者がこの事件に関心を抱いたのも、この謎に因る。
“伝説のSeeD”といえば、当時の世界最強の人物といっていいだろう。その彼が、不意であっとしても、何故易々とクラスメートに殺害されたのか。何故、サイファー・アルマシーはスコール・レオンハートを殺害したのか。更に何故、スコール・レオンハートの葬儀当日、サイファー・アルマシーは自殺したのか。そしてもう1つ。何故、関係者はみな、口を閉ざしたのか。
 この謎の1つでも解明できないかという気持ちから、筆者は存命する関係者に取材を試みた。
 当時秘密にせねばならなかったことでも、50年経った今なら明かすことが出来るかもしれない。そんな期待を込めて。
 結論から述べよう。
筆者にこの謎を解き明かすことは出来なかった。
ただ、この謎を解き明かす、ほんの小さな糸口だけは掴むことが出来た。
それにより、筆者はある1つの推測をたてることも出来た。
しかしながら、その糸口を辿ってその推測を証明することは筆者には無理なようだ。
 このような勿体ぶった書き方に読者諸君は業を煮やしていることだろう。
では、筆者が取材によって得た事実と推測を順番に説明しよう。
 まず、事実について。
実際のところ、筆者が掴んだのは事実と銘打つほどのものではない。
存命する関係者に取材してみたものの、彼らは一様に首を振った。
 「あの事件に関して、推測することはできても知っていることは何もない。自分が語ってよいことも、語るべきことも何もない。真実は、彼らだけが知っていればいいことだから。」
 これが、彼らの言い分である。彼らは事件の真相を全く知らないような表現をしたが、筆者の見た所、恐らく真相の一端は知っているのだろう。
しかし、その真相を沈黙の内側で守り通し、葬ることを堅く心に誓っているようだった。
 筆者も随分と食い下がってみたのだが、彼らの決意は強固で、残念ながら真相に近づく道は開けなかった。だが、唯一の収穫といってもいいコメントを1人の関係者から得ることができた。
 それは、筆者の「この事件が持ち去ったものともたらしたものがあるとすればそれは何か?」という質問に対する返答だった。その人はこう答えた。
 「いつか、人がもっと時間を重ねた先に、その答えがあるのかもしれない。」
これが、前述した、糸口である。では、筆者の推測を述べよう。
 まず、いくつかある謎の答えは、たった1つだと感じられた。つまり、サイファー・アルマシーがスコール・レオンハートを殺害した動機も、最強であったはずのスコール・レオンハートが易々と殺された理由も、サイファー・アルマシーが自殺した意味も、関係者が沈黙で守り通すものも、すべてがたった1つの真実を示すということである。そしてそれは、当時マスコミで騒がれたような、単純な諍いなどではなく、本人たちの感情や彼らを取り巻く環境が複雑に絡んだ結果なのだろう。更に、筆者が得た関係者の言葉から察する限り、サイファー・アルマシーもスコール・レオンハートも、互いに納得した上での行動だったのではないか。筆者にはそう思えてならない。
 筆者は糸口を掴んでもこの謎を解き明かすことは出来ないと書いた。それは何故かと問われれば、それは糸口として示した言葉の通りである。
この事件が持ち去ったものももたらしたものも、もっと時間が経てば見えてくるかもしれないという代物だ。このコメントを残してくれた関係者の口振りを考えると、その時間とは1年や2年のことではないのだろう。恐らく、筆者がこの事件がもたらしたものを見られるかどうか、ギリギリというのが正直なところなのではないかと考えられる。
 願わくば、いつか、偶然にでもこの記事を目にした未来の読者諸君の中に、この事件の持ち去ったものともたらしたものを突き止め、そこから得られた事実からこの謎の真相に近づくことの出来る者が現れることを、そして、その未来の探偵の出現にまだ筆者の時間が流れていることを期待して、この記事を締め括りたいと思う。』


to Dawn Valley 15. -the Witch.-


Dawn Valley 13. -Dawn Valley-




 ここは、とても、自由だ。
自分の好きなことだけを考えていられる。
わずらわしい冠詞も、もう、ない。
 こんなに自由な気持ちになるのは、どれくらいぶりだろう?
 ヘンだな。
そんなに大して時間は過ぎ去ってないのに。
なのに。なんだか、とても昔のことみたいだ。
 暗闇が、優しい。
すべてを包んで。俺の視界から消し去ってくれる。
 ここには、なにも、ない。誰も、いない。
少し、寂しい…な。
 なあ。サイファー。
俺たち、いろんな重荷から逃げようと、必死になってたよな。
もしかしたら、自分の気持ちからも逃げようとしてたのかもしれない。
 俺は、アンタの気持ちに応えたくて。自分の気持ちが邪魔だった。
こうやって、すべてから解放されてみると、なんだかすごく滑稽な気がするけど、でも。あの時は、それで必死だった。
 「振り返って見ると、すべてが懐かしく大したことなく見える。」
使い古された言葉でも、それが真実だと思う。
 “伝説のSeeD”なんて大層な呼ばれ方は、確かに重荷だった。
その呼称と一緒になって俺に押し寄せてくる期待や思い込みも、苦痛でしかなかった。
 だけど、そんな呼ばれ方をされるに至った行動を、俺は後悔してない。
 サイファー。
あんただって、後悔してないだろ?
あの頃の俺たちは、何もわからずに、考えずに、ただ、自分ができることだけを、精一杯やってた。
 結局、その行動の果てに俺につけられた冠詞が、俺たちに最後の選択をさせたのだとしても。
それ以前とそれ以後の自分を比べたら、あの時の行動を、後悔なんてできない。
 ここは、寂しい。
でも、昔の俺は、それが寂しさなんだと理解することもできなかった。
寂しいと思えないから、何をしたいのか、どうすればいいのかわからなくて、ただ苛立って、諦めた。
 今は違う。
寂しいと、感じられる。だから自分が何を求めているかもわかる。どうすればいいかも、知ってる。だから。
 サイファー。
あんたを待ってる。
 小さな頃。俺は待ってるのが嫌いだった。
待っても待っても、会いたい人が現れないことを、知っていたから。
 でも、今は違う。
あんたは来る。そう、確信できる。
何の約束も、しなかったけれど。
 あの時のサイファーの眼、好きだと思った。ただ、それだけだ。
 すべてを捨てて、俺だけを見た眼。
世界のことも、みんなのことも、そして俺の気持ちさえも、捨てて。
 ただ、俺を欲しいと、訴えた眼。
初めて。
 何の遠慮も、偽りもなく、サイファーがサイファー自身の気持ちだけを俺にぶつけた。
 「愛してる。」
あんたは何も言わなかった。でも、俺にははっきりと聞こえた。
 だから。
俺は応えた。すべてを捨てた。
 サイファーが、欲しい。
その気持ちだけを、残して。
「わかってる。」
俺も何も言わなかった。でも、あんたには聞こえたはずだ。
 早く、来い。…いや、急がなくても、いい。
どっちだ、って怒鳴られそうだな。
でも、どっちも本当の気持ちだ。
 サイファー。あんたのガラじゃないかもしれないが。
俺に、孤独が寂しいということを教えてくれた人たちに挨拶くらいしてきてくれよ。

 こうやって、勝手に結論を出してしまった俺たちを、それでも責めないで許してくれるだろう優しい人たちに。
 俺たちよりも、幸せな生と死が訪れてくれるといいと、心から祈る。

 ここは、自由で、暗闇が優しい。
でも、いい加減寂しいんだ。一人だから。
 サイファー。
ここは、暗くて何も見えないから。だから、来る時は、ちゃんと、俺がすぐにわかるように来てくれ。
 サイファー。
早く、あんたに逢いたいんだ。

 優しい暗闇が支配するこの場所に。
射し込む暖かい色の光。
 眩しくて、懐かしくて、暖かくて。

ああ。待ってたんだ、サイファー。


 寂しさを溶かす、光。
 少しずつ、少しずつ。
この場所を照らし出してゆく。
 まるで。

 夜明けの谷のように。


to Dawn Valley 14. -50 years after-


Dawn Valley 12. -Seifer-




 スコール。スコール。スコール。
たった一人の名前をこんなにも狂おしく感じるなんてな。
 俺たちは、ずっと足掻いてた。
それは、俺たちが大人になれないでいた所為なのかもしれないし、おまえに無責任な重圧がかけられていた所為かもしれない。
もしかしたら、もっと上手く生きていく方法だってあったのかもしれない。
けどわかってるのは。
 所詮俺たちは現実に妥協できないガキでしかなかったってことだ。
 そして。
 俺にとって、おまえが。おまえだけが。
 世界のすべてに勝ってたってことだけだ。
 でもよ。
それで、充分じゃねえか?
こう思うまでには随分時間かかっちまったけどな。
けど、そう思えた瞬間、それまで足掻いて苦しんできたすべてのことが嘘のように消えてなくなった。
 結局、人間なんてそんなもんなんだろう。
すべてのものに優先順位があって。それはもうどうしようもねえ。なのに、優先順位をつけてるってコトがすげえ卑しく感じられて。
それを認めたくなくて足掻いて。
 けどな。優先順位をつけちまうのは、本能みたいなもんだ。そうしなきゃ、生きてなんか行けねえ。
 それを認めたとき。俺は、あらゆるものを捨てようと決めた。いや、そう思った瞬間に、俺はすべてを捨てたんだろう。
 ただ一人、おまえだけを手に入れるために。
優先順位を認めちまえば、それは怖いくらい簡単なことだった。
 スコール。おまえだけが、欲しかった。
おまえだけを手に入れたかった。他のすべてを捨てても。
 もしかしたら。
普通だったら、それでおまえを手にいれることができたのかもしれない。俺がすべてを捨ててしまう決意さえすれば、それでよかったのかもしれない。
だけど、俺たちは。普通の域にはいることができなかった。特にスコール。おまえはな。
 おまえは、この世界で最も特別な人間の一人だった。
望む望まないに関係なく、それは紛れもない事実だった。
 だから。
俺がすべてを捨てても。おまえが、どんなにすべてを捨てようとしても。
後から後からおまえには負わされるもものがあって。
おまえがおまえである限り…。おまえが、「スコール・レオンハート」である限り。そして。「スコール・レオンハート」が"伝説のSeeD"である限り。
 それは絶えることがなかった。絶えることのないということを、俺たちは知っていた。
 自分たちが、いかにガキかって思い知らされたのはその後だ。
俺たちは、妥協できなかった。大人に。なれなかった。
どうにかして、この理不尽な重責から、悪意のない過剰な期待から、逃れられるんじゃないかと足掻いた。
 結局は、無理な話だったけどな。
そう、最初から。無駄だとわかっていながら、俺たちは足掻いていたのかもしれない。
 捨てようと決めたすべてのものから自由になるために足掻いた。
 だけどよ。その、すべてってのは、生半可なモンじゃねえ。
その、とてつもなく大きいものに足掻くんだったら、本当に、なりふり構わず足掻くんじゃなきゃ、そこから自由になるなんて到底無理な話だった。
 けどな。できなかった。
すべてを捨てるのは怖くなかった。足掻くことに迷いもなかった。
でも、おまえを傷つけるかもしれない恐怖は、拭えなかった。
 傷つけ、られなかった。
癒せると。知っていても、どうしても出来なかった。
 それが、俺の限界だったってわけだ。
それが限界で、もう、道なんてなかった。
 世間は。
 俺の行動を狂気の沙汰だと言ってる。
 あの時の俺は確かに、狂気を孕んでいたのかもしれねぇ。
だとしたら、俺は、俺自身の「正気」も含めて、すべてを捨て去れたってことだろう。
 でもよ。
あの時も、それ以前も、今も。
おまえだけを欲するこの気持ちだけは変わらない。
 こうしている瞬間も、体中が、おまえを求めて叫んでる。
 スコール。スコール。スコール。
 あの時。
俺がおまえのガンブレードを向けた時に見せたおまえの静かな笑顔は、俺にこの4日間を耐え抜く決意をさせた。
 おまえは、わかってくれている。
 そう確信できたからこそ、俺はおまえより少しだけ長く、この世界に留まろうと思った。
 おまえのいない、この世界にいようと思った。
どんな事情でも、俺が、おまえを、おまえを大切に思い、おまえが大切に思っていた相手から奪ったのは、事実だからな。
 だからその相手には会っておくべきだと思った。
 リノアとは、顔合わせただけだけどな。あいつ、俺の顔見るなり頷いて、それだけで部屋から出ていきやがった。…いい、女になったよな、あいつ。
 ラグナとは、さっき少し話した。でも顔は見てない。わかって、くれてたよ、話さなくても。さすが、俺の憧れた魔女の騎士ってとこだな。
 外で、鐘がなってる。
スコール。おまえを、過去の偉人にする合図だ。
 俺も、もうそろそろ、おまえに逢いに行く。
おまえなしで過ごすのは4日が限度だな。これ以上は、耐え切れねぇよ。
 ちゃんと、出迎えろよ、スコール。
なんせ、おまえはもう、4日もそっちにいるんだ。道にも慣れただろ。
 歓迎のキスのひとつもしてくれよな。
スコール。スコール。スコール。



---------------------------------愛してる。


to Dawn Valley 13. -Dawn Valley-


Dawn Valley 11. -Laguna.2.-




 人間って不思議だなあ。
悲しいこととか、辛いこととか、知らない間にちょっとずつちょっとずつ、記憶の底に沈んでいくんだ。
 もうダメだ、もう立ち直れないって、その時どんなに強く思っていたとしても、月日が過ぎて日常に埋もれていくうちに、気づけば、他愛ないことで笑えるようになってる自分がいる。
 それを、忘却って言うんだろうかって思ったことも、昔あったけど。
でも、忘れたりは、しないから。絶対に、忘れたりしないから。
これは忘却なんかじゃないって思ったんだ。
 忘却っていうのは、記憶の中から消し去ってしまうことだろ?
でもこれは、記憶の底に沈めておくだけだからな。ふ、とした時に簡単に浮かびあがってくるから。
 でももしかしたら。
それさえも罪なんだろうかって。
不安になったこともあった。
 今こうしてるように、おまえたちのことを思い出して。
思い出すってことは、普段は心の中にいないってことで。
あんなにも、俺にとって大きな存在だったはずなのに、それを思い出さなきゃいけない程、普段心の中に置いてない俺って薄情者なのかなあ、なんてぼんやり思ったりして。
 あんなにも哀しかったのに。あんなにも切なかったのに。
あの時の自分の気持ちさえ、ホンモノじゃなかったのかもしれないなんて、落ちこんじまったりして。
 でもな。
でも、それが、生きてる者の日常なんだって、今は思ってるよ。
なあ、スコール?それで、いいんだよな?
 今までも、今も、これからも、ずっと。
俺にとって、おまえはホントに大切な存在だけどさ。でも、同じ世界にいないことも、否定しようのない現実だから。
だから、俺は俺の現実を生きていく。いつか、おまえとまた、同じ世界にいられるようになる日まで。
 土産話とか、いっぱいあるぞ。まあ、土産って言うのかわかんないけどな。
おまえたちは、見てるのかな。俺たちが、こうやって自分の時間を必死に生きてる姿を。
 みんな、元気でやってるよ。
おまえたちがいなくなって、いろいろ問題も持ち上がったりしたけどさ。でもなんとか、頑張ってる。
 俺は相変わらず、大統領なんて言われて結構長い任期務めてんのにさ、こないだキロスのヤツが「ラグナ君はいつまで経っても貫禄ってものが身につかないようだね」とか、しみじみ呟きやがってさ。ったく、悪かったな、貫禄なくて!
 他のヤツらも、いろいろ変わったトコも相変わらずなトコもあって。
 キスティスな、結婚したぜ?俺が結婚式のスピーチをバッチリ決めてやろうと思ったんだけどさ、にっこり笑って断られちまった。
 ゼルなんかもう、父親だってさ。かっわいい女のコなんだよ、子供。今から娘が悪い男に引っかかるんじゃないかって心配してんだぜ。
 アーヴァインとセルフィは、なんだかんだ言ってうまく付き合ってるらしい。まあ、結婚なんてものにはまだ道程は遠そうだけどな。
そうそう、セルフィはな、今でも俺のこと、「ラグナさま」って呼んでくれるんだぜ?いいコだよなあ。
 あと、風神と雷神。あいつらも、相変わらず、いいコンビだよ。ちゃんと、サイファーの仲間で在り続けてる。
サイファー、ホントにいい仲間持ったんだな。
 リノアは。
元気だぜ。ますますジュリアに似てきてなあ。会うたんびにさ、ちょっと昔に戻った気分になるんだよ。
ティンバーももうすぐ完全に独立できそうだ。だいぶ前から、自治区になってたんだけどさ、今度カーウェイさんがガルバディアの大統領に就任してな、多分話が早くまとまるんじゃないかな。

 ……なあ。
おまえたちは、元気か?…いや、「元気?」なんて聞くのはヘンだな。
どうやって聞けばいいのか、わかんないんだけどさ。やっぱり、「元気か?」
伝説のSeeDだとか、魔女の騎士だとか、そんなもの、なんにも関係のない世界に。
おまえたちが何の荷物も持たなくていい世界に、いるんだよな?
 こんなこと言うとさ、サイファーはともかく、超現実主義なスコールには「死んだらそれで終わり」とか言われそうだけどさ。でも、やっぱり、おまえだって、この世界の全てを超越した世界を、信じてたんだろ?だから、サイファーと一緒に、そっちに行くことを選んだんだよな?
 答えてくれなくても…いいから。
おまえたちは、すべてから解放されて、お互いのことだけを考えて、こことは違う世界に、いる。
 俺は、そう信じてるよ。そう信じて、いつか、おまえたちとまた、逢うことができるよう、願いながら。
いつか、今度こそ、スコールに、俺がおまえの父親なんだって、言えるように祈りながら。
 俺の現実を生きて行く。


きっと、いつの日か。
みんなが、それぞれの荷物を置いて、微笑える時が来ることを、信じて。
それで、いいんだよな?サイファー。
そうだよな?スコール。


to Dawn Valley 12. -Seifer-