おまえは、幸せだったんだな…?
だって、ほら、ここで眠るおまえの顔は、こんなにも安らかで美しい。
俺は。俺たちは。
おまえを失ったことを悲しんでも、時間をとめられてしまったおまえ自身を悲しみ、哀れむ必要はないんだな?
そう、なんだな…?
俺は、おまえを失ってしまった俺自身を悲しむだけでいいんだな…。
おまえは。幸せなんだな、スコール…。
俺たちは、そんなに多くの時間を過ごしたわけじゃなかった。
本当は、出会えたのだって、奇跡的だった。
まあ、それも、ある意味では必要に迫られてのことだったし、そんな状況だったから、満足に話せるようになったのは、出会いからしばらく経ってからだった。
「スコールはね、ラグナおじちゃんと、レインの、子供なんだよ。」
エルオーネが、嬉しそうに言ったセリフ。
初めてスコールの姿を見たとき、ほんとは飛びついて、頭くしゃくしゃに撫でてやりたかったさ。
レインによく似てた。
俺はおまえの父親なんだ、って。レインが、おまえの母親なんだ、って。
何よりもまず、そう言いたかった。
でも、そんなこと言っていられる状況でもなかったし、何より、俺は実の息子を17年も放っておいた男だから。
父親なんて、そんな図々しいこと言っていい立場じゃなくて。
でも、レインのことは知っていて欲しくて。
俺が、レインのことを本気で好きだったことを知っていて欲しくて。
俺は、おまえのことを、知らなかったけれど。
でも、レインを。おまえの母親を。
本気で愛してた。
結果的に、俺はレインを一人で逝かせてしまったけれど。
本気で、守ろうと思っていた。
おまえに、決して幸せとは呼べない道を歩かせてしまったけれど。
でも、俺は、おまえを愛してるんだ。
おまえにとって、俺は最低な男で、父親だなんて思えないだろうけど。
俺は、おまえの父親として。この世でたった1人、血を分けた息子を。
本気で愛し、守ろうと思った人の血を受け継いだおまえを。
愛しいと、思ってるんだ。
そう、伝えたくて。
戦いが終わって、ようやく時間を作って、スコールに伝えにいった。
緊張で足攣りっぱなしで死にそうな思いだったけどな。
話そうと思ってたこととは全然関係ないことばっかりペラペラとしゃべっちまって、スコールに冷たい視線送られたっけ。
結局、言えたのは、レインがおまえの母親なんだってのと、俺はレインを本気で愛してたってことだけだった。
つまり、それは、俺がスコールの父親だってことなんだが、どうしても、父親なんだ、とは言えなかった。
スコールは、一言だけ、「わかってる。」そう、言ってくれた。
レインによく似た顔で。レインによく似た言い方で。
まるで、レインが許してくれたみたいで。
1人で逝かせてしまったことを。
辛い、寂しい思いをさせたことを。
ガラにもなく目頭が熱くなって、息子の前でそんなみっともない姿見せらんないから、余計に饒舌になって、更にスコールに呆れられたな。
おまえ、俺をなんだと思ってたんだ?スコール。
父親、じゃないだろう?
別に友人だったわけでもない。仲間だったわけでもない。
クライアント?そうだったのかもな。
でも、クライアント、の一言じゃ済ませない程度には、俺に親近感を持ってくれてたよな。
それは俺の思いあがりか?
なあ、スコール。
俺、おまえに訊きたいことが山ほどあるんだぞ?
もっと、時間をかけて。
おまえと話して、少しずつ、訊きたかったことがあるんだ。
話したいことが、まだまだあるんだ。
いつか、俺はおまえの父親なんだ、って言いたかったんだ。
いつか…、おまえに、「父さん」って呼んで欲しかったんだ。
おまえ、無口で何も言わなかったけど、察しはいいから知ってたんだろ?
俺が、そう望んでたことを、さ。
知ってて、少しずつ、時間を作ってくれてたんだよな。
おまえは無口で。俺は饒舌で。
全然似てない親子だけど。
思ってることを半分も伝えられないトコは、似てたのかもな。
なあ、スコール。
今なら、言える気がするんだよ。
俺が、おまえの、父親なんだ、って。
やっぱり足は攣っちまいそうだけど、それでも。今なら。
聞いてくれるか?
なあ?スコール…。
to Dawn Vaaley 2.-Renoa 1.-