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Beautiful Name




 アナタからオレへ。
最初で最後のプレゼント。
 独りっきりで、寂しかったでしょう?
「頑張れ」と励ましながら手を握ってくれる相手もいなくて。
 自分の命の影が、頼りなげに揺れる中で、きっとアナタはそれでも気丈に強くあろうとしたんだろう。
困っている者を見過ごすことの出来ないバカな男を好きになった、自分に呆れながら。
 アナタは苦しい息の中、懸命に微笑もうとしただろう。
アナタだけに見えただろう、2度と触れることの叶わない、愛しい男の笑顔に応えて。
 オレがこの世で最初に感じたのは、無条件にオレという存在を喜んだアナタの涙。
記憶なんてなくても、オレにはわかる。アナタの頬を伝った歓喜の涙が。
 アナタは、自分の時間が急速に失われていくことを覚っていただろう。
だから。
 アナタはきっとまだ何もわからないオレに謝っただろう。
その腕にきちんと抱くこともできないことを。
オレと一緒に、愛しい男の帰りを待つこともできないことを。
朦朧とする意識の中、「愛してる」と「ゴメンね」を繰り返しオレに囁いたのだろう。
 でも、大丈夫。
アナタは、ちゃんとオレにプレゼントをくれた。
それは、僅かな時間しか一緒にいることのできなかった、アナタと、オレを繋ぐ橋。
 大丈夫。そしてありがとう。
アナタがオレにくれた唯一のプレゼントを、オレは愛しく思ってる。
オレの大切な人たちから、愛しく想う相手から、優しい響きで発せられるそれを。
 アナタからオレへ。
最初で最後のプレゼント。

「スコール。」