バカなことするなって、言われそうだね。
そうだね、わたしもバカなことするって思うよ。
そう思うならやめろって、言うね、きっと。
ゴメンね。やめられないの。
何で止めなかったんだって、みんなのこと、責めないでね。
みんなには、話してないんだもん。
ラグナさんは、知ってるけど。考えなおせって言われたけど。
でもね、思いつきじゃないんだよ。昔みたいに、「作戦変更!」ってしゃがみこんでその場で決めたわけじゃないんだよ。
ずっとずっと。考えてたんだ。
これじゃ、繰り返しなんじゃないかなって。
だって、魔女の力の継承を止めない限り、この歴史は何度も繰り返される。
わたしたちのこの世界のはるか先に、確かにアルティミシアは誕生して、力を使って、過去を浸食して。スコール、あなたに倒されて、そしてその力をイデアさんに継承して、それはわたしに継がれて。あなたは何度も何度も“伝説のSeeD”になり続けて、サイファーと一緒に何度も何度も苦しんで、何度も何度もあんな終わり方を迎えなきゃいけない。そんなの、わたしはイヤ。
だから、終わりにするの。
わたしにしか出来ないから、わたしがする。それだけ。
わたしが、わたしの時間と一緒に、繰り返しの歴史を持っていくよ。
そして、先へ続いていく未来を持ってくるから。
大丈夫だよ、安心して?ね?
ちゃんと、人生で一番楽しい時期は過ごしたよ、わたし。
キスティやセルフィと一緒にお買い物行ってお茶飲んだり、お父さんと一緒に食事に行ったり。みんなでパーティしたり。
他愛無いかもしれないけど、凄く楽しいこと、いっぱいした。
ほら、女は一生綺麗でいたい生き物だっていうでしょ?だから年取るのを怖がるって。
わたしなんて、この一番いい時期を持続できちゃうんだから、ある意味すごいと思わない?
ティンバーだって独立したんだよ?お父さん、新しいお嫁さん貰ったし。ふふ、すごく優しくて素敵な人なんだ。
ホントに、大丈夫だから。
わたしは満足してる。
ホントは心残りも1つだけあるけど、それは仕方のないことだし。
それはなにかって?そんなの決まってるじゃない。鈍いなあ、もう。
あなたたちと、同じトコに逝けないってことに決まってるでしょ。
まあ?同じトコに逝っても、ふたりでラブラブだったら居心地悪くてしょーがないだろうからいいけどねーっ!
って、ヤだ、今ちょっと想像しちゃった。似合わなさ過ぎる…。
ね?わたし、大丈夫でしょ?
でも納得なんてしてくれそうにないなあ…。ゴメン、ね。
許してなんて、言わないから。
あなたたちが、決して望まなかった道を選ぶわたしを、許してなんて言えないから。
ごめん、ね。それしか言えないけど。
いつかまた、あの約束の場所で、逢えるといいね。
いつか、また…ね…。
世界の歴史が大きく変わったその日。
それを知ったのはごく僅かな人々だけだった。
世界中の人々がその事実を、繰り返しのない人類の未来という形で認識するのは、それから100年近く経ってからのこととなる。
エスタ魔女記念館。
十数代前の大統領の指示で今も厳重に護られているその建物の奥に、1人の魔女が眠っている。
鎖を通して首に下げた武骨な指輪を大事そうに握り締めたまま、まるで話し疲れて眠ってしまったかのように。
少女のような面影を持った魔女は、ひっそりと、今もたった1人で眠りつづけている。