それは速報として世界中のメディアに伝えられた。
“伝説のSeeD”の葬儀当日。英雄を殺した犯人が自殺。
自室で壁に背を預けて死んでいるのを発見されたという。
死因は、頚動脈裂傷。スコール・レオンハートと同じ死因だった。
悔恨によるものとの見方が圧倒的だったが、中には精神異常説まで持ち出すメディアもあり、各マスコミはこぞってサイファー・アルマシーの生い立ちからその死までをいいように騒ぎ立てた。スコール・レオンハートの訃報が発せられた翌日にエスタ大統領、ラグナ・レウァールとスコール・レオンハートとの親子関係が発表された為おざなりになっていた殺人事件の原因追及も、それを機に再び加熱する。
二人が同じ孤児院で育ち、同時期にバラム・ガーデンに入学したことから、幼少期に何かトラブルがあったのではないかとする説や、先の「未来の魔女大戦」において二人が何度となく戦闘を繰り広げていることに起因するという説など、まことしやかに憶測が語られた。
当然、事の真相に一番近い位置にあるであろうバラム�・ガーデン及び各関係者も過激なまでの取材攻勢に晒されたが、彼らは沈黙を守り通し、この事件の話題に触れることは一切しなかった。どんなに時が経っても。
犯人の自殺、という形で幕が下ろされたこの事件に関しての関係者のコメントとして唯一発表されたのがエスタ大統領ラグナ・レウァールのものである。
被害者と加害者が共に亡き者となった今、この事件において渦中の人と称してよいのが被害者の唯一の肉親であることが判明した彼だった。
ラグナ自身はサイファー・アルマシーの死を受けてのコメントを発表することを渋っていたようであるが、先の「未来の魔女大戦」後、世界をリードする大国の大統領という立場上、全く発言しないというわけにもいかなかったのである。無論、マスメディアが求めているのはエスタ大統領としての公式発言ではなく、被害者の肉親としての個人的なコメントであるのは明白であったが、公職にある者は時として個人的なコメントすらも発言することを強いられるものだ。
「今後一切、この件に関してのコメントはしない」と宣言した上で、ラグナ�・レウァールは短いコメントを発表した。
本当に短い、たった1行のコメント。
『彼を責めていないし、責める気もない。これからも、責めることはないだろう。』
このコメントはかなりの反響を呼んだ。
サイファー・アルマシーの一方的な感情が原因の犯行という説に落ち着きかけていたマスコミの報道も、被害者の父が加害者を責める気がないというのは、被害者側にもなんらかの原因があったからではないかという説を唱え始め、やはりこの事件の真相、またはその一端をラグナ・レウァールが知っているはずだと、更なる取材攻勢をかけた。
しかしこの後、ラグナは宣言通り、この事件に関するコメントを発表することは一切なかったのである。
真相に近い場所にいる者たちがみな沈黙を守り続ける中、マスコミはこの事件をいいように書き立て、人々もそれに便乗して無責任な噂をしたが、新たな情報が全く出てこないため、報道は次第に沈静化してゆき、それに伴い人々の口の端に事件の話題が登ることもなくなっていった。
そして、真相を謎にしたまま、世界は事件のことを忘れ去っていった。
後年、人々が“伝説のSeeD”という呼称とその伝説だけをまるで御伽噺のように記憶し、事件のことも、スコール・レオンハートという青年の名も、その記憶から消し去ってしまうほど時間が過ぎ去った頃。年若いジャーナリストがこの事件に興味を持ち、存命する当時の真相を知っているであろう人々に取材を試みたが、彼らはみな、「あの事件に関して、推測することはできても知っていることは何もない。自分が語ってよいことも、語るべきことも何もない。真実は、彼らだけが知っていればいいことだから。」と一様に口を閉ざし、それでも「この事件が持ち去ったものともたらしたものがあるとすればそれは何か?」と食い下がる年若い記者に対して「いつか、人がもっと時間を重ねた先に、その答えがあるのかもしれない。」と答えたという。
to Dawn Valley 11. -Laguna.2.-