バラムガーデンから全世界に向けてその訃報が発せられた時、それを瞬時に理解できた者は皆無だったと言っていいだろう。
みな一様に、耳を、目を疑い、次いで信じられないと首を振り「タチの悪い冗談だ」と眉をひそめた。
訃報は至って簡潔だった。
「当ガーデンに在籍中のSeeD、スコール・レオンハートが逝去致しました。」
たったそれだけの文章。
その簡潔さ故に、最初その訃報は静かすぎる程の冷静さを以って受け入れられた。
だが、その訃報を知った人々の中で「スコール・レオンハート」という名と「伝説のSeeD」という称号が一致した瞬間、その冷静さは疑いを経て驚愕と悲嘆へと変わったのである。
バラムガーデンが誇る、伝説のSeeD。
未来の魔女の野望から世界を救った英雄。
この世界で彼に敵う者などいないと、そう思われていた。彼が死ぬ要因があるとしたら病気や不慮の事故なのだと誰もが思っていた。だからこそ、翌日報じられた事件の内容に人々は更に驚いた。
バラムガーデン内で起きた殺人事件。被害者はスコール・レオンハート。
加害者はクラスメート、サイファー・アルマシー。
一種の治外法権が見とめられているガーデン内の事件には警察の介入もなく、バラムガーデン自体が沈黙を守り通した為、人々が知ることができたのは、被害者と加害者の名前だけだった。
何故?2人の間に何があったのか?
様々な憶測と噂が飛び交い、マスメディアはこの事件を大きく扱った。
訃報が発せられた翌日には各国の政府から「伝説のSeeD」の死を悼む声明文が発表される。
『悪意に満ちた強大な力を持った魔女の手から、我々と我々の世界を救ったスコール・レオンハートという英雄の死に、我々は心からの哀悼の意を表する。彼の死は我々にとって大きな喪失であるが、その喪失感に打ちひしがれることなく、我々は彼の功績を無駄にすることのないよう、平和な世界を築いていくことを、ここに誓う。』
各国とも似た様な内容の声明文を発表する中、一国だけ、全く異なる声明文を発表した国があった。東の科学大国・エスタである。
『スコール・レオンハートという、まだ20歳にも満たない少年の死に私は深い悲しみを禁じえない。今はただ、彼ができるだけ安らかな眠りに就いていることを心から願う。
エスタ大統領 ラグナ・レウァール』
エスタ大統領はこの声明文を発表するとすぐ、バラムガーデンに赴き、英雄の遺体の傍から離れようとしなかった。
他国とは異質な、個人的感情に満ちた声明文と、一国の代表者としては度を越した大統領の行動に、人々は始め疑問の声を投げ掛けたが、エスタの政府広報機関からエスタ大統領ラグナ・レウァールと「伝説のSeeD」スコール・レオンハートが実の親子であったことが発表されると、マスコミは恰好の話題に飛びつき、人々の関心もまた、殺人事件からエスタ大統領の過去へと移っていったのである。
そして、英雄の葬儀当日。事件は新たな展開を迎える。
to Dawn Valley 6. -Renoa 2.-