「えぇと、スコール…?」
フリオニールは戸惑い気味に目の前の相手に声を掛けた。
「なんだ?」
対するスコールは極々当たり前にそう返してきて、そうすると何か用があったわけでもないフリオニールは慌てて「なんでもない」と手を振るしかない。
「…ヘンなヤツだな」
スコールは追及するでもなくそう言って首を傾げた。
やっぱり、おかしい。
フリオニールはそう思う。何がおかしいって、スコールに決まっている。
用もなく声を掛けられて、それを追及もしなければ、機嫌を損ねもしないなんて。
なんというか仮にも恋人に対してこんな評価を下すのもどうかとは思うのだが、スコールは間違いなく気難しいタイプだ。普段は無表情というより不機嫌そうだし、二人きりの時はそれに拍車が掛かる。本当に不機嫌なわけではなくて、未だ恋人と二人きりという空間での身の置き方が掴めずに戸惑っているだけなのだと理解するまではフリオニールも相当焦ったものだった。
だが今のスコールは一体どうしたことだろう。
いつもは硬く引き結ばれている唇は錯覚でなければ花のように綻んでいるし、普段は凛と怜悧な視線も今は柔らかく潤んでさえいるように見える。
絶対に、おかしい。
フリニールはそう確信して、もう一度意を決してスコールに声を掛けた。
「スコール…何かあったのか?」
「…何もないが?」
不思議そうにそう答えて、それからスコールは恋人が酷く怪訝そうに自分を窺っている理由に気づいたらしい。
「本当に、何もないんだ。ただ…」
「ただ?」
「なんだか、すごく幸せな気持ちなんだ」
理由など判らない。ただ気づいたらとても幸せで満ち足りた気持ちになっていたのだとスコールは言う。
「アンタがここにいて、俺がここにいて、それだけのことが嬉しい」
そう口にするスコールの様子が本当に幸せに満ちていて、フリオニールはあれこれ考えることを止めた。
中々笑ってくれない恋人が、今こんなも幸せそうに微笑んでくれるのに、あれこれ考えることなんて何もない。
「スコール」
「なんだ?」
「傍に行っても?」
そう尋ねればスコールが両手を伸ばしてくれるから、フリオニールは迷わずその体を抱き締める。
恋愛沙汰に不慣れな者同士、いつもはこうして触れ合うのにももっと戸惑いや気恥ずかしさが付き纏うのに、今は素直に行動に移せる。気づけば、自分にも幸せな気持ちが伝染しているのかもしれないとフリオニールは思った。
スコールが言ったとおり、理由などなく、ただこの空間が幸せで、この時間が愛しい。
暫くそうして抱き合っていると、くいくい、と後ろ髪を引っ張られた。
それだけで、何を求められているのかが不思議なくらいよく解る。
フリオニールは一旦体を離すと、間近にあるスコールの眼を覗き込むようにして言った。
「…あいしてる」
言葉をそのまま贈るように、唇を重ねる。
今ここに満ちる幸せと、それを形作るすべてのものを。
あいしてる、あいしてる、あいしてる。