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白く染まる熱




 自分と彼の体が繋がっている、と思うと不思議な気がした。
自分を組み敷く逞しい腕の持ち主は、いつもと同じように涼しい顔をしているようで、そうじゃない。彼の顎から自分の胸へとポタッと落ちる汗の滴がそれを物語っている。
 ライトはなにもかもが眩しい。
ぼんやりとそう思った。硬質な肌の色も、怜悧な髪の色も、自分と見つめあう眸の色さえ、どこもかしこも色素が薄くて眩しくて綺麗だった。手を伸ばして、ライトの二の腕から掌までをなぞる。掌まで辿り着いた自分の手は、その大きな手にぎゅっと握り取られた。こうしてピタリと合わせていても、決して彼の白さと混じり合えない自分の色。
「どうした?」
問う声には、いつもと同じ落ち着きと、いつもにはない熱があって、ああこれは自分だけが知っているものだな、なんて優越感に少しだけ浸ってみる。本当は、そんな余裕ないのだけれど。
「…ラ、イト」
「辛くないか?」
真顔でそんなことを聞いてくる男が可笑しい。
 辛くないか?辛いに決まってる。アンタだって辛いだろう?
「も…いい、から…痛くない、から」
握られた手をぎゅっと握り返して、空いている手を相手の首に回して、動いてくれと強請る。
そうしないと、いつまでだってこの男は自分の体を気遣って動こうとしないのだ。初めてこうして抱き合った時など、慣れない痛みに強張りが解けない自分を見て、あろうことか自分の中から出て行ってしまったくらいなのだ。ちょっと痛いくらい、いくらだって我慢するというのに!
「ん…、ぁっ」
自分の中を抉る熱に、自然と声が洩れる。自分と決して混じらない色を持つ、この眩しくて綺麗な男の、それでもコイツも確かにただの人なのだと思わせてくれる欲の塊が、自分の中にあることが嬉しい、なんてちょっと異常かもしれない。
「スコール…」
少しだけ掠れ気味の声。その声で呼ばれると、余計感じるのだと彼は知っているだろうか。
「あ、あ、ん、ああっ」
 どこもかしこも白くて眩しくて綺麗なライト。こんなにピタリと体を合わせても、決して混じり合わない自分の色。
口づけを強請りながら、体の中に注ぎ込まれる熱に、内側から彼と同じ色に染まったらいいのに、と思った。